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「チェ 28歳の革命」 [watching]

 もういつ観に行ったかも思い出せないくらい前の話だけど、ちゃんと映画館行って観ました。ブログにあげるのは基本的にわざわざ映画館に観に行ったものにしている。

 ソダーバーグの映画でよいと思ったものってほとんどないんだけど、お勉強がてら観に行った。
 ソダーバーグの作品で私が好きなのは、「セックスと嘘とビデオテープ」と、「トラフィック」はまあまあ良かったけど、あの単調で無駄に冗長な作品を救っているのは一重に出演者の演技力であって、彼の技量ではないと思っている。「エリン・ブロコビッチ」も好きだけど、あれはあまりにもソダーバーグらしくない。きっとコマーシャル的に何かあったに違いと思いこみ、彼の作品ではないに違いないと考えることにしている。
 つまり私はほとんどソダーバーグが好きでない。インテリ然とした彼の才能を疑ってさえいる。

 ったらまたプログラムが売り切れで閉口した。もーーー、余計に刷っとけよ。それで客商売のつもりなのか?単館上映じゃあるまいし。次にまたプログラムがない映画に出会ったら映画館に火を付けたい。

 私はチェがキューバからしたら外国人であることすら知らなかった。彼の基本的な生い立ちがかなり重要そうなのに、作品はそんな所のバックグラウンドはすっ飛ばしていきなり革命をおっぱじめるところから始まる。
 ???
 なぜ革命に傾倒していくのかのモチベーションがいまいち分からないではないか。彼はアルゼンチン人だぞ。
医者で、妻もいれば子供も3人いるぞ。自分の家庭すら放棄して成就するかどうかも分からない革命に命をかける意気込みの裏付けがあったならもっと感情移入できたと思うんだよね。
 だし、作品だけ見るとカストロと彼の関係は表面的なものでしかないようにも受け取れる。革命を引っ張って行ったのはむしろゲバラであるともとれる。カストロは彼の功績に胡坐をかいたとも取れる。
 実際、ゲバラの志は革命後のキューバにとって利用される形で終わってしまう。
 だからこそ彼は次の戦場を求めて旅立って行ったわけだけど。
 そこで挫折しなかったのがすごいと私は思う。
 ただでさえ喘息持ちで、戦場に立つ以前に限りなく死線に近いところをさまよっているっていうのに、やっと勝利を収めたかと思ったら結局「ブルータスよ、お前もか」みたいな身内による官僚的裏切りにあったのに、なぜか心はくじけない。
 私が思うに、彼の気持ちは結局アルゼンチンを目指していたのかもしれないね。だからこそ、革命を止めるわけにはいかなかったんだ。この革命の火を大きくして故郷に届けることこそが彼の目標だったんじゃないだろうか。ボリビアで銃弾を浴びた彼の無念はいかほどだっただろう。
 お兄ちゃんが彼のことを「ビューティフル・ドリーマー」を称したが、その理由が今になって染み込んでくる気がする。

 「もしわれわれが空想化のようだといわれるならば、
  救いがたい理想主義だといわれるならば、
  できもしないことを考えているといわれるならば、
  何千回でも答えよう、そのとおりだと」

 たぶんこの言葉がお兄ちゃんをそう思わせたのだろうけど。
 この先、ゲバラのように成功させる革命家って現れないんだろうか。今の不況がどうとか言う以前に、常に目の前にある窮状を脱したいと切実に願っている人たちは今も地球にごろごろしていると思うんだよね。チベットやミャンマーみたいにただ平和に暮らしたいと望む人のために、いつか彼らの革命が成就するればといいと思う。

 キューバでの革命がクライマックスを迎えるサンタクララでゲバラの身近になる女性がいる。女性はゲバラに憧れの視線で、けれどゲバラはそれを読み取って、「私には妻も子供もいるから」と一線を引くので、『ほほう、家族を大事にする男か』と思ってそれはそれで感心していたら、後日「別れの手紙」のプログラムで当の彼女との間に二男二女をもうけてどうやら結婚までしたらしい。なんだよそれ。結局してんじゃん。あのかわしの演出は何のためだよ。ふつうに惹かれあってたらいいじゃんか。
 なので、「別れの手紙」はアルゼンチンにおいてきた家族、子供にあてた手紙だと思ってしんみりしていた気持ちが、吹っ飛んでしまった。あれはアルゼンチンに残した家族あてではなく、キューバで新しく作った家族にあてた手紙だったかと思ったら、アルゼンチンにいた家族が不憫になってしまった。キューバに新しく出来た家族のために、ないがしろにされてしまったんだろうかと思って。でも普通そうだよね。アルゼンチンなんて遠いもの。かわいそうだなと思った。

 と言う事で、終始革命のドキュメンタリータッチから離れなかったソダーバーグの演出により、映画から分かったことよりも、その後プログラムや自分でリラべて分かったことの方が多かった作品だった。
 ソダーバーグのこの必ずと言っていいほどの色気を欠いた、何の感情の起伏もなく、どちらかと言うと盛り下がったまま淡々と続くドキュメンタリータッチの描写には常々首をひねってしまうばかりだが、ゲバラのことを少しでも知る機会になったことだけは確かだ。
 確かだが、あまりの中身の無さに、その功績を彼にやるわけにはいかない気がする。そんな無味乾燥な映画を見た後でも何とか意味を見出そうといろいろ考えたりした自分を褒めたいと思う。

 そんな一作だった。

 che28.jpg
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