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「図書館戦争」 [reading]

 最悪だった。本屋で見たときに帯に「『本の雑誌』2006年1位」とか書いてあって、ゲドのI、IIと一緒に勧められて買ってもらったんだけど、私はそのタイトルからして引くものがあった。正直嫌な予感がした。それでも買っちゃったのは、買ってくれるという人の強引に勧めてくる姿勢に自身の強い興味が現れていたので断れなかったから。しかしてその結果はやっぱり最悪だった…。なんじゃこりゃ…。ライトノベルじゃん…。「本の雑誌」って同人誌かなんか?…。

 と思ってググってみたら、うーん、そんなにおかしな雑誌ではなさそう。だたざっと読んだ感じでもやっぱ好き者が書いてる印象はぬぐえないな。「本の雑誌」って雑誌がほんとにあって、かなり長いみたい。少なくとも23年以上も続いてるみたいだ。ふーん。roだってまだ20年経たないよねきっと。すごいなぁ。なくなったりしないんだ。編集者もずっと一緒みたいだし。女の人なのかな?途中で名前が変わってる。意外だったのは内容もなんか本ばかりのことじゃないみたいで、これはこの本以上に一回買って読んでみる価値あるかもなと思った。とどのつまりこの本はその為に出会ったのかもしれない。それにしてもこの本を読まなくてもこれにたどり着きたかった…。
 「本の雑誌」はHPもあって、本屋さんの紹介があったんだけどそれが面白いなと思った。フランチャイズの大型店じゃなくて個人店を紹介してるみたい。本オタクに新たな餌食を紹介するだけじゃなく、お店の人の勉強にもなるのねと思って感心した。ふーん。

 話を本の感想に戻すと、終始作者のノリ突っ込みの勢いで書かれているすげー読みにくい構文だった。一番まいったのはどうにもこうにも一文が長いことだった。特に台詞。句点を全く省いて一気にまくし立てる姿はすごく頭が悪く見える。実際そういう設定なのかもしれないけど。美文って形容からは程遠い作品だった。
 アンド、キャラ設定があきれるほど分り安すぎる。安っぽいテレビドラマ見せられてるみたいだ。なんの意外性も新鮮味もない。王子が誰だかわざわざ書いて教えてくれなくても分りますから。この分り安すぎるキャラ設定は安易に過ぎると言ってもいいかもしれない。
 重火器帯びて曲がりなりにも人の命を預かる立場にいながら恐ろしいほど馴れ合った職場で、嫌悪すら覚える。隊と名の付く組織の癖して上下の規律とかが皆無だ。なんだこのぬるい世界は。あまりにも主人公に都合のよすぎる設定にはっきり言って嫌気が差した。
 そしてこの世界観。リアリズムみたいなものがすっぽり抜け落ちている。ライトノベルって大抵こんなもんか?世界観が閉鎖的で狭い。作者が意図してる世界観が物語に出てくる当事者以外に当てはまらない。世界は図書館の外にもあって、そことどう折り合いをつけてこの物語が存在するのか、その辺が全く実感持てなくて。結局出てくる人たちだけの間で繰り広げられるファンタジーで終わってる。だからなんだ、幼稚なんだよなぁ。この話って近未来が想定されていたと思うんだけど、図書館をめぐって人命を晒すことが近々の日本にそんなに現実味があるか?局所的にこんなに暴力的になるわけがない。こんなことで人がバタバタ死ぬなんて、日本全体どうなっちゃってんの?と思うでしょ?その辺ノー・ケアだから。個人的な意見としては、ここまで官僚システムに腐蝕した国家が、ある日突然ファシズムに走るにしても今更こんなことを暴力で押さえつけたりしないと思うのは私だけか。どっかの途上国じゃあるまいし。もっと頭使って労働力減らして「情報操作」とかってのをするんじゃないの?こんなに大げさに立ち回ったら真実がどっちにあるか認めてるようなもんじゃんか。これじゃ子供のケンカだよ。

 思うに世界観の狭い広いはあんまり作者の意図に関わらないと思う。書いてれば自然と出てきちゃうもんなんじゃないのかな。例えばハルキの話はよく自閉的って言われて、私も狭い範囲ではそう思う。けど、広い範囲では、結局はその自閉的な「僕」個人の世界が現実に「僕」を取り巻く世界とどう折り合っていくのかが物語のありような気がする。つまり「僕」に起こる全く個人的なドラマが、水に打った波紋のようにどう世界に浸透していくかって様子が結局は全体として描かれているんじゃないかと。そして腕のいい作家って言うのは自然とそういうことが出来てる人の事なんじゃないかと思う。だって、多分それを意図してやってたらもっとその辺が技巧的に浮かび上がってきちゃって隠せないと思うんだよね。そうなったらきっとわざとらしさが気になると思うから。
 エーコは別だね。あればずるいね。だって実際に起きた事を下地に書いてるわけだから、どんなに突拍子のないことを書いても現実味が薄れる訳がない。しかし、彼の作品を読むと「現実は小説よりも奇なり」って言うのがよく分かる。そんなテキストを探し出してくる彼の執念っていうか情熱がすごいと思うよ。

 Amazonの投稿を見る限りみんなこの話を気に入っているみたいなのが更に意外だった。否定しているコメントは見当たらない。私のセンスはそんなに外れているのか。続編もあるみたいだけどもう勘弁。なんか内輪ネタで盛り上げる内容になってるみたいだし。しかもこの先まだこのネタで続けるみたいだし。

 まあとにかく「本の雑誌」を読んでみようという気にだけはなったので、全く何も得られなかったという訳ではなかったのが不幸中の幸いみたいな出会いだった。


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