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「ゲット・スマート」 [watching]

 意外としっかり出来たコメディでおもしろかった。なんじゃこりゃ。
 私はTVをあまり観ないのでコマーシャルもあまり見ないんだけど、結構CM打ってたらしい。あそう。
 けど、MSNにうっとーしいほど広告打ってるのは知ってた。必ずどのキャラも微妙に被っているその構成からコメディなんだろうとは思っていたけど。つーか、スティーヴ・カレルが出てる時点でそうなんだろうけど。

 スティーヴ・カレル主演のコメディを観るのは初めて。ただ、アン・ハサウェイの出てるのが意外だったけど。
 私がスティーヴ・カレルを初めて見たのは「ブルース・オールマイティ」だった。つまんなかったなぁこの映画。ジム・キャリーは好きなんだけど。そのジム・キャリーのライバルキャスターの役で、結構いい仕事してたんで、『この人コメディの素養があるんだな』なんて感心してたけど、本当にコメディアンだったんだね。失礼しました。しかし、私の第一印象も外れていなかったようで、「エヴァン・オールマイティ」と言うスピンオフを作ったらしい。人気者じゃん。
 スティーブ・カレルは「奥さまは魔女」とか(もちろんニコール・キッドマンの出てるやつだけど)、「リトル・ミス・サンシャイン」にも出ているって聞いて、全くどんな役だったか思い出せなかったんだけど、かなり経ってから『あーーーーーっ、あのゲイの兄弟役か!』とやっと気づいた。そんなキャラがいたこと自体を忘れてしまっていたので思い出せなくて当然だが、当の作品も言うほど私の印象に残らなかったのでしょうがない。「リトル・ミス」では、制作側はロビン・ウィリアムスを切望していたという話もあるらしいんだけど、それにしなくてよかったと思う。キャラにも合ってなければ、他のキャストとのバランスも取れてないし、何より奴が出てきた途端に作品の方向性が崩れちゃったと思う。制作側は不服だったかもしれないけれど、作品としてはスティーヴ・カレルの方が適任だったと思う。し、そもそもロビン・ウィリアムスじゃ家族構成としても年が離れすぎてておかしいよ。偉い奴らの考えることって分んねーな。お前らの考えるのは知名度だけかよ。あの作品のいいところは、キャストのバランスが取れてたってこと。それが作品のインディペンデント性を高めたと思うし、そのインディペンデント性が見る方に緊張感を与えたんだと思う。ロビン・ウィリアムスなんか出てきたら一気に緩んじゃうよ。

 話がずれたけど、それにしても本当に地味な人なんだなぁと思って感心した。コメディアンで地味ってのはかなり強みだと思うんだよね。だって、大抵のコメディアンがバカキャラ路線なんだから。チラ出してたビル・マーレイを見ろ。あの人はあそこで何やってたんだろう。あのシーン自体はなくたって全然本筋には影響ないのに。わざわざつかったってことはよっぽど制作側に絡んだ人の友情出演だと思うのが妥当だよね。スティーヴ・カレルなのかな。しかし、あんなんでギャラもらったのかしら。
 私、思うに、コメディアンの真価って、普通の人をどれだけ普通に演じられるかどうかにあると思うんだよね。バカにシリアスな演技ならノイローゼ気味なふりをすればいい。けど、普通の人ほど演じるのが難しいことってないと思う。多分それは俳優一般に言えることだと思うんだけどね。キャラクター性の強い演技はエキセントリックになればいいだけだけど、普通の人を演じてて感情移入させられる演技をする俳優は少ないと思う。
 えー、再びずれたけど、つまり、この映画が面白かった理由は、バカがバカやってるからじゃなくて、真面目な人がまじめにやっていることが裏目に出るのが面白いというだけの話で、決してバカな真似をしているんではないからじゃないかってこと。実際、主要キャラにバカはないない。アン・ハサウェイもザ・ロック(と今では言わないんだけど)もアラン・アーキンもみんな大真面目だ。大真面目にやってるその様子がというか、結果がたまたま報われなかったりするので、それが傍から見ていて面白いってだけの話だ。むしろベタなコメディキャラは脇にこそいる。デスクワークの落ちこぼれ2人組とか、幼児にダメだしされる大統領とか。
 大統領がソニー(ゴッド・ファーザーのソニー役のジェームズ・カーンのこと)だったのはうれしかったな。私、「ゴッド・ファーザー」シリーズは好きだから、そこに出てた一連の役者(除くソフィア・コッポラ)が今も活躍しているのを見るとうれしい。ロバート・デュバルとかね。
 三度話がずれたけど。あと、私が特に気に入ったのは、各省とか組織のトップが集まって国家安全の定例mtgみたいな場で、その各省だか組織のトップがみんな唖然とするくらい仲が悪いってこと。結局どの国でも行政の仕事って縦割りで、どこも責任を押し付けあうような醜い構造になってるのかなと思ったこと。この仲の悪さって、アメリカの社会通念として一般的なのかなと思った。あらゆる組織は他のあらゆる組織と対立してて、手柄を取り合い、責任をなすりつけ合い、顔を合わせると中傷やら罵りの言葉しか口を突いてこないという。だとしたら、その対立自体、政府に仕組まれたものっぽい感じがしない?対立させといた方がきっと良く仕事するもんね。

 けど、この血の多さは作品全体に通して言える雰囲気で、のんびりした役以外のアラン・アーキンを見るのは初めてだった。あのキャラにはこっちが面食らったくらい。とてもO.D.で死んじゃうヒッピーなおじいちゃん役でアカデミー賞を獲ったとは思えないほど、短気で喧嘩っ早くて、情熱的な上司だった。アラン・アーキンのキャスティングはスティーヴ・カレルの強い推薦だとか。で、そこまでプログラムを読んでもまだ思い出せなくて、『アラン・アーキンに絡んだキャラでそれっぽいのがいたっけ……』と考えて初めてゲイの弟キャラを思い出した。
 ちなみにこのプログラムは短観映画でもないのに700円もして私を驚かせた。でも、内容はかなり充実してて読んでて面白かったよ。これも読んでて分ったことなんだけど、これってTVドラマがオリジナルなんだってね。
 アン・ハサウェイの作品を観たのはこれが初めてだけど、今まで甘いイメージがあったけど(ダサい女子高生がお姫様になるとかさ、ださいOLがアパレル業界でのし上がっていくとかさ)、この作品ではピリリとスパイスの利いた女性を演じてて、それがかっこよかった。これで彼女のキャリアの幅も広がるんじゃないかなと思った。個人的には彼女の着てた白のライダースがお気に入りだった。あれもシャネルだったのかな。でも私生活では結構大変な目に遭っていらっしゃるようでちょっと気の毒だった。お父さん、お母さんに甘えて、早く立ち直るといいと思う。
 ザ・ロック(と今は言わないんだけど)は「ウォンテッド」のアンジェリーナ・ジョリー並に存在感が薄くてこれまたバランスが良かった。主演好いてるザ・ロックを脇に持ってきたのはいいキャスティングだったと思う。犯人がエージェント23なのは、よく考えたら悲しい事実なのに作品ではそんなことには露ほども触れなかった。だって、いじめられっマックスの心からの守護者でもあり、理解者でもあるのに。マックスには相当こたえる事実のはずだ。そんないい奴の23が、あれだけの規模のテロを起こすんだから、それはただのドロボーではなく、彼なりの政治思想って言うのがあってしかるべきだと思うんだよね。その辺の弁明を聞いてみたかったなと思った。
 細かい演出やなんかがいかにも気を遣って念入りに作られているのがこの作品への印象を高めた理由の一つだったと思う。マックスがエージェント99の部屋に朝食を持って訪れると、入りざまドアではち合わせたメイドに「内緒に」のしぐさをして部屋に入ってくるところや(本当は紙袋から突き出したバケットとバラの花に興味をそそられただけかもしれない)、エージェント99がマックスに整形の辛さを打ち明けた時の”I use to look like mom.”と言った言葉にぐっときた。そういうメリハリがあったのがよかったんだと思う。

 スティーヴ・カレルは制作総指揮もやったらしいね。これは勘だけど、結構彼のセンスが作品に反映されているような気がする。だって、この作品の監督が撮った他の作品はどれもつまらなかったもの。「NY式ハッピーセラピー」とか「50回目のファーストキス」とか。こう見るとアダム・サンドラーが好きなのね。この監督は。アダム・サンドラーももうちょっと出る作品選んだほうがいいと思うなぁ。演技h評価されたりもしているわけなんだから。こういう言うほど当たらなければ中身もないコメディにばかり出るのはどうかと思う。

 あの終わり方がいまいち気に入らなかったんだけど、他になにか考えられなかったんだろうか。せっかくそれまでおもしろかったのに、最後つまんない、しらけてしまうような、『それで終わりなの?』的なしめ方でちょっと拍子抜けしたが、既にそこまで作品に満足してしまっているし、これで帰れると思うとらさほど惜しくもないと言えばそうだった。

 それにしても、スティーヴ・カレルやアン・ハサウェイ、思いがけず、次が楽しみな俳優ができた映画だった。
 この映画はいい出会いだったと思う。

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