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「ダーウィン・アワード」 [watching]

 観たい映画が出来たというので、何かと思えば思いもよらない作品だった。こんなんに興味持つのか。私、この映画のことを雑誌でチラッと見て知ってはいたんだけど、「俺たちフィギュアスケーター」って映画と間違えちゃってて、てっきりこの映画に今回の映画の主演の二人も出てるのかと思っちゃった。別の映画だったのね。

 HPを送ってくれたのである程度は分かってたけど、実際観てみたら想像をはるかに超えた二流俳優の宝庫だった。すんごいちょい役で二流スターがたくさん出てる。HPのトレーラーでアレッサンドロ・ニヴォラが出てるの見ただけだってかなり驚いたけど、本編見たらトレーラーに映ってるあれが彼の出演時間の全てで、最初はなぜこんな低俗な映画に出てんだと思ってすごい意外だったんだけど、その出演時間の短さに納得。その程度だったらいいやってことだったんだな。でもとにかく、あれもこれもと、観てて「あっ、この人」って何度連れに耳打ちしようと思ったことか。けど、連れはあまり映画に詳しくないので説明が長くなっちゃうし、どうせ知らないだろうなと思って、知ってる人が出て来る度にすごいうもぞもぞしちゃったけど我慢した。トム・ホランダーとか、果てはロビン・タニーなんかが出てるのにはびっくりして声上げちゃうところだったよ。トム・ホランダーの相手役がジュリアナ・マルグリースで、頭の足りないセレブ役立ったんだけど、それを小気味よく演じてて、こんな映画で彼女の女優としての意外な可能性を発見てしまってなんだかとっても残念な気持ちになった。後で、プログラムを買って分かったんだけど、私、初めてアークエット家の末っ子を見たよ。ここまで来ると、一体どうやってこんだけの数の、それも同じようなレベルの二流スターを集めたのかと思って、誰がキャスティングしたのか知りたかったけど、プログラムにはそんなことちっとも書いてなかった。予想、ウィノナ・ライダーなんだけど。
 ウィノナ・ライダーはとってもアカデミックな家庭のお嬢さんだと言うことをこの映画のプログラムを読んで初めて知った。おじいさんが作家なんだって。ちょっと調べた感じだと、ヒッピーだな。ビートニクか。ウィノナが不良なわけだ。そのおじいさんの関係で、他の有名なビートニク作家と交流が篤いらしくって、この映画で出てくる本屋さんとそのオーナーは本物なんだって。で、この本屋とオーナーを出演させようと言うのは彼女自身のアイディアらしい。この映画はひょっとすると、キャスティングだけじゃない範囲でかなりウィノナの力が反映されてるのかも。大体、彼女の両親も出てるとかって書いてあるくらいだから。メタリカの出演取り付けたのも彼女だって言うし。まあ、ジョニー・デップと付き合ってたくらいだから、別にそこのつながりはさほど驚かないけど。トーキングヘッズとかXのメンバーも出てたらしいんだけど、私もさすがにその人たちは名前を知ってるだけの世代なので顔は分からなかったな。

 ジョセフ・ファインズが嫌いなんで、それさえなかったらこの脚本のまずさも、こんだけ二流スターが出てるんだからもっと薄められたんじゃないかと思うと残念でならない。だってあの人いちいち芝居がかった演技するんだもん。歌舞伎じゃないんだからさ。一方、ウィノナはやはり持ち前のセンスでかなりさらりといい仕事をしてた。多分こんなんは彼女にとっては軽い仕事なんだろうなと思わされた。っていうか、今から思うと、これって彼女の地に近いのかもな。
 映画自体は、テーマがテーマなんで、どうしたってドリフ的なロード・ムービーとしか要約しようがない。思わず笑わずにはいられないところもあるけど、作品自体はかなりクソだ。この点に関してははっきりさせておこう。この映画はかなりクソだ。ただねえ、脚本やら構成やらがいかにまずくても、如何せん出てる俳優がいいんで、こんなクソみたいな映画なのにほっといてもいい仕事しちゃうんだよね。それがどうにももったいなかった。例えばデヴィッド・アークエット。彼はかなりいい台詞とか貰って、十二分にその役を果たしてたと思う。ベッドで、ジュリエット・ルイスに「オレは自慢の夫か」って尋ねるところとか、あと、保釈中の出来の悪い弟がバカみたいに「おれはいい人間かな、悪い人間かな(Am I good or bad?)」と聞くのをいつもは適当に流しているのを、死の車に乗り込む直前には、「今はちょっと悪い方だけど、それがどうしたって言うんだ(little bit bad right now. But what's wrong with that?)」と微塵の照れくささも見せずに答えてあげる。弟に対する真摯な愛情表現にグッと来た。ここがこの映画の最もいい場面だったと思う。
 後は本当にどこを取ってもドリフのコントを繋ぎ合わせたような感じで、連続殺人犯を追っているとか、捕まえると言ったプロットの辺りにはなんの緊張感もなくて作品にメリハリがない。それもこれも、この聞いたことない監督とジョセフ・ファインズの臭い演技のせいだと思うけど、ウィノナ・ライダーはどんなに汚れても、どんなに汚い言葉を吐いてもかわいらしくてボーっとしちゃった。そう言う人間が世の中に一人はいるもんだなと思って感心した。
 メタリカは期待してたよりも出番が少ないし、歌も披露しないしで、結構がっかりさせられたんだけど、それでも、みんなもういい年のオッサンのはずなのに、年とってなお、と言うか、更に、かっこよくなってて惚れ直した。最近じゃ全然浮いた話聞かないけど、これからも元気で頑張って欲しい。
 プログラムは600円なんだけど、これで600円なのかと言うくらいしょぼい内容でとどめにまたがっかりさせられた。あんだけスターが出てるのになんも説明なしかよと思って。でも、本当の意味で充実したプログラムってあんまりないかもな。ないわけじゃないけど、大抵が無駄に高いか、価格的には大したことないけど、その代わり内容も大したことないようなのが多い。ちゃんと気の利いたのを作ればそっからまた別の映画を観ようって動機を繋げられるだろうに。今回のなんて、HPの内容に毛が生えたくらいだったもんね。悪いプログラムの後者のタイプだった。

 自分じゃ絶対に観ようとは思わなかった。そう言う出逢いのある度に、人が人に関わることの意味を改めて考えさせられる。観に行ってよかった。作品の出来はどうであれ。


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