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「パーク・ライフ」 [reading]

 これねー。あまりのつまらなさに2ヶ月経ったら話の内容をすっかり忘れたよ。
 帯を読んでもピンと来るものはなかったんだけど、表紙の黄色いドット人間みたいな人が、そのコミカルさとは裏腹に、何気に包丁らしきものを持ってるから、そのシュールさに期待してたんだけど、この表紙から受ける印象と作品の中身とは全く関係がなかった。訴えたいくらいだよ。
 もともと芥川賞にはつかみどころのない作品が好まれるけど、これは…。なぜ?。この年はこれ以外になかったの?なきゃ無理矢理あげることないのに。本来はそうあるべきだと思うんだけどなぁ。

 これを読んで気になたのが、この作品の内容以上に、この本を買うのと前後して、どっかの雑誌が作者の新作に対するコメントを掲載していたのを読んだんだけど、そこで過剰なまでの自信を恥ずかしげもなくひけらかしていたこと。マジで?この程度の作品しか書けないような人間のそれほどまでに自信を持つ作品て?恐ろしくて手に取る気にもなれない。

 この人の描くキャラのどれにも感情移入が出来なかった。スタバみたいにすぐに風化するブランド分化を何の匿名性もなく持ち出して、しかもそれでやはりすぐに風化する時代性を描いている。なんていうか、一言で言うならば、すごく薄っぺらい作品で、何の存在感もない。そう言う時代性にすぐ左右されてしまうような、移ろいやすいテーマやディテールにばかり気を使っている様子がいちいち鼻について、音楽業界で言うところの一発屋としか私には映らなかった。そして物語は何も始まらず、何も終わらない。正直、この作品の一体なにが評価されたのか私には分らなかった。

 本編よりも更に不愉快だったのがおまけの作品で、「パラレル」からこっち、この作品に到るまではずっとこの手のテーマに当てられっぱなしだった。なぜ男の人ってこうまで性的に不実なのかと首をかしげてしまう。端的に言って、バカじゃないの?という感想しか残らない。男にはそもそもの初めから貞操観念なんてものがないのかも知れない。貞操なんて言葉とは無縁の行動をとる彼らを見る限り、きっとセックスなんて大したものじゃないんだと思わざるを得ない。セックスと言うより貞操がだな。そんなもの特に意味はないんだとしか思えない。愛してる人がいても、セックスは別腹。愛していることとセックスは別物なんだ。そしたら愛ってなんだろう。どういう性質で、どういう関係の上に成り立つもんなんだろう。貞操が妄想だとするなら、恋人なんて人間関係も成り立たないんじゃないのかな。そう考えると誰かを好きになるなんて虚しくて、割に合わない行動のように思える。

 おまけの作品では、見分不相応な夢を抱えた小市民のしょーもなく下らない、けれど逃避不可能な日常を描いている。そう言うとすごく意義のある作品を書いているみたいだけど、その概要を埋めるのは結局のところ下半身の欲望と、それを何の疑念も挟まずに行う人間の心の卑しさ貧しさだ。「ハリガネ」でも書いたけど、類は友を呼ぶ。そう言うところにいる人間は、そう言うところから出られない。例え理不尽に貶められているとしても、半分はそこから抜け出せない、抜け出すことをしない自分に責任があると言うことだろうな。

 この作品は「ハリガネ」と一緒に買ったわけだけど、わざわざこんな作品を、いくら文庫とはいえお金を出して買ってしまったなんて、読んでからかなりへこまされる話だった。

パーク・ライフ (文春文庫)


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