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「八月の路上に捨てる」 [reading]

 面白かった。芥川賞ってみんな似てるな。淡白だ。さーっと駆け抜けていって後にあまり印象を残さない。軽い読み物だ。「蛇を踏む」とかも芥川賞だよね。ただ、それでいつも思うのは、芥川自身の作品に照らし合わせてこれが彼の名前を拝するに値するのかなと首をかしげる。つって私自身、芥川をよく知っているわけじゃないけど。なんとなく、これでいいのかなって思うだけ。こういう賞があってもいいとは思うけど。つまり、こざっぱりした読み物の大賞みたいのが。

 タイトルからは想像しない離婚自慢みたいなはなしだったけど、人生経験の浅い若い夫婦が小さな齟齬から躓いて、でも、相手に気遣って上辺だけ取り繕ろうから一歩づつ確実にお互いに乖離していって、しまいにゃそれを無理矢理埋めようとお互いに衝突して泥の上で取っ組み合って、最後は大雨が降って全てを流していってしまって後には何も残らなかったみたいなこの話は、はたから見たらかわいらしくもあったし、むしろすがすがしくもあった。

 愛でおなかはいっぱいにならないの典型みたいな顛末だった。男には包容力もなければ甲斐性もないし、女にはそれを鼓舞したり諭したりするだけの器量もない。お互いに愛してはいたんだろうと思う。だけど、その愛は現実に向き合っちゃうと全く耐性のないものだった。要するに幼稚だったんだね。お互いをどう大事にすればいいのか分らないみたいだった。それで結局愛をダメにしてしまったみたいな結末だった。

 愛ってさ、一緒に成長していけることだと思う。お互いに成長していけるから愛が育つんだと思う。ほっといて大丈夫な愛なんて存在しない。愛は生き物だから。この二人はうまく育てることが出来なかった。ただそれだけだと思う。その気がなかったんじゃなくて、育て方を知らなかったんだと思う。もしくはそういうものだってことすら知らなかったかもしれない。もっとも、育て方自体、二人で見つけなくちゃいけないことなんだけど。

 仕事仲間の水城さんに共感できるところはあまりなかったかな。特に、あからさまに下品なセクハラを受けても何も言わずにいるのは理解しがたかった。私だったら労災だとか警察だとか言って大騒ぎしてると思う。

 後半におまけみたいに付いてる話は、「生協の白石さん」をぱくって作ったような話で、なんか付け足さなきゃいけないから書いたのかなって感じだった。自分の実生活に近いのかもなと思って読んだ。フリーのライターが在宅勤務で感じる孤独を気の会う彼女との会話に安堵を見出すみたいな話だった。なんか世間離れした甘えた内容で、これ書いてるの男だったらちょっとやだなと思った。

八月の路上に捨てる


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